室内被害のシミュレーション
室内被害のシミュレーション

室内の人や設備を守る技術で
社会の安全・安心に貢献する

室内被害のシミュレーション
正月 俊行
2007年度入社
東京工業大学大学院
人間環境システム専攻
地震時の室内被害と向き合う

地震時の室内被害と向き合う

地震が起こる度に建物の被害が発生していますが、建物の骨組みとなる「構造躯体」(柱、壁、梁など)に関する耐震基準はその度に厳しくなっており、構造躯体の損傷や倒壊などにより建物が使えなくなることは減ってきています。そこで次の段階として「倒れてきたもので人がケガをする」「オフィスや工場の中がぐちゃぐちゃになって使えない状態になりビジネスが中断する」といった室内被害への対策が求められています。家具や設備の固定などを実施すれば室内被害は減りますが、「賃貸物件なので、壁や床に穴が開けられない」、「仕事の効率が落ちるからレイアウトを固定したくない」といった理由で、実質的には実施が難しいのが現状です。こうした中で私は「完全ではないが、壁や床に固定しなくても転倒しにくくする、落下するものの数を減らす」といった実質的に可能な室内被害対策の具現化を目指しています。また公共的なプロジェクトの一員として、画像解析技術を使った室内被害の把握など、より進んだ対策のための研究開発にも関わっています。

複雑な「非構造部材」の挙動を解析

複雑な「非構造部材」の挙動を解析

主に建物の構造躯体の耐震性評価を行う部署にあって私は、建物の室内に置かれた「非構造部材」(家具・設備・天井など)の地震時の挙動解析を担当しています。これは私の修士のときの研究テーマが、実際の仕事になった形です。KKEでは、新しいテーマを自分の力で立ち上げることができます。具体的な業務としては、企業からの「倉庫の荷物が崩れないようにしたい」「大型のサーバーを床に置くが、地震で倒れないか評価してほしい」といったニーズに対応しています。今までで印象に残っているのは、ある家具メーカーからの転倒防止器具についての依頼です。「実験で転倒防止の効果があるのは分かっているが、なぜ効果があるのか分からないので解き明かしてほしい」という仕事でした。「すぐに分析できるだろう」と臨んだのですが、複雑な事象がいくつも絡んでおり、当初考えていた評価手法、解析プログラムでは対応できませんでした。プロジェクトに入っていないメンバーの知恵も借り、プログラムを急きょ機能追加するなどして、何とか納品にこぎつけました。技術的にも採算的にも苦労しましたが、組織としても個人としても大いに勉強になったプロジェクトでした。

SCHEDULE

ある1日の流れ

  • 8:30

    出社
    社内打ち合わせ
    自席で作業
    (解析作業・プログラミング・報告書作成など)

  • 12:00

    昼食

  • 13:00

    外出
    クライアントと打ち合わせ

  • 16:00

    帰社
    自席で作業
    (解析作業・プログラミング・報告書作成など)

  • 18:00

    退社
    (育児のため定時退社)

世の中に役立つアイデアを形にできる

KKEは、自由度が高い職場です。私のように「男性所員でも育児休暇を遠慮なく取得する」といった働き方の自由度もさることながら、プログラミングやコンピュータ好きの私にとって一番嬉しいのがコンピュータに関するルールの柔軟性です。会社のセキュリティ対策の方針が、所員に適度な自由度を与えるように設定されているので、自分の使いたいソフトを使って作業を効率化したり、新しいITの技術を手軽に試したりできます。また勉強する自由があるのも魅力的です。おかげで私は、社会人になってからも大学の研究室に通い博士号を取得し、その後、学術的または業務上で著しい成果を上げた所員に贈られる服部賞(社内の表彰制度)をいただくこともできました。さらに、社外との協業についても積極的です。「世の中の役に立ちそうだ」「これは面白い」というアイデアが出たら、頭ごなしに否定されることはありません。私の例でいうと、あるメーカーと協力して「地震ザブトン×VR(バーチャル・リアリティ)」を開発したことがあります。椅子型の装置とVRの映像によって、地震の揺れを感じながら、大きな家具が倒れ、身近に迫ってくる体験ができるこの装置はNHKの番組でも紹介され、「長周期パルス」というまだ知られていない地震の脅威を多くの人に知ってもらうことができました。今後も安全・安心な社会を実現するための活動に挑戦していきたいと思います。