個人の成長が社会として成長につながるKKE
私はイスタンブール工科大学院「ITU」の建築学専攻修士課程で、自然と調和する建築設計を目指して「建築環境制御と技術」というプログラムを学び、高層ビルの周辺環境への風の影響を風洞実験により評価する研究を行いました。その後、東京工業大学の博士課程に入るために来日し、研究対象領域をスケールアップして、都市における温熱、風の数値解析を行いました。
博士研究員で環境省のS‐14という「アジアのメガシティにおける緩和を考慮した適応策の実施事例研究」プロジェクトに参加し、ジャカルタの街を冠水から守る巨大防潮堤建設に向けた、都市部における風・温熱環境への影響を研究しました。このプロジェクトで3年間働いた後、東工大で開かれていたキャリア支援イベント「K-meet」に参加して、KKEに出会いました。
就職を決めた理由は3つあります。まず、KKEの企業理念が私の価値観に合っていました。大学の研究成果を社会に還元する橋渡しとしてより良い住環境を実現する役割を担いたいと思っていました。次に、外国人の女性として、平等な機会を促進し、個人の成長を気にかける会社で働きたいという思いがありました。KKEに就職することで個人として成長し、同時に組織と社会の成長にも貢献できると考えました。三番目に、創業者である服部所長は同じ東工大を卒業し、ベンチャーとしてKKEを設立されましたが、私も事業開発に寄与できる研究開発とともに「次世代の社会構築」に貢献する仕事がしたいと思いました。
学際的な設計エンジニアとして成長
業務では、構造設計・技術部に配属されてから、アートオブジェの構造解析、鉄筋コンクリート、CLT建物のプロジェクト等幅広くプロジェクトに携わりました。同僚や先輩とのディスカッションを通じて、構造設計の基礎知識を多面的に身につけることができました。部門では、構造プロジェクトだけでなく、マーケティング、ネットワーキング、事業開発などの経営管理アプローチについても学び、私の専門分野を超えて知識を広げる機会になりました。
現代は、各分野の境界が曖昧になり、一つの分野の知見だけでは問題に答えられない時代です。だからこそ、KKEが推奨しているデザインとエンジニアリングの統合されたアプローチが求められます。それは、革新的で創造的なソリューションを提案するためにも必要ですし、KKEにおける私自身の学際的な設計エンジニアとしての成長にもつながっています。
KKE GREEN CHALLENGE 2056
KKEには年一回、「社内公募」というビジネスコンテストがあるのですが、京都大学と共同研究で開発した「Bio_FlexShade」という気候適応型シェーディングシステムが「最優秀賞」を受賞しました。それは、温度と湿度変動に応じて自己形成する、エネルギーを必要としない持続可動なシェーディングデバイスです。現在、特許を出願しており、屋外性能実験の後、実用化の検討を進めています。
もう一つ、当社には「未来投資」という全社の持続的な成長の実現に向けて、ビジネスシーズから次世代を担う事業の育成を支援する取り組みがあるのですが、そこで選ばれたテーマが、環境配慮建築設計のコンサルティングです。この取り組みでは、創業者である服部正所長の「世の中で一番贅沢なことは人の為に一生懸命尽くしてその人の喜ぶのをひそかに見て楽しむことだ」という言葉に込められた想いを引き継ぎ、地球環境に対してより良い社会を生み出すことをミッションに、「KKE GREEN CHALLENGE 2056」と銘打ち、地球への負荷を削減し、未来の世代につながるレジリエンスと持続可能な住環境の創造を目指しています。
日本を超えて環境に配慮したレジリエンスな社会の実現
私は日本のように地震が多いトルコから来ました。M7以上の地震が今後70年以内にイスタンブールを襲う可能性は95%です。イスタンブールの1,500万人の住民のうち10%以上が家を失うことになります。したがって、トルコの国家地震戦略と行動計画には、経済的、社会的、環境的被害を防ぎ、その影響を減らす耐震性と持続可能な建設が定められています。私は、この脆弱性に関連して母国に貢献する責任を感じています。そして、災害リスク削減に関するトルコと日本の合同セミナーでは、KKEの持続可能でレジリエントな設計ソリューションであるCLT技術を紹介する機会を得ました。それは私の目標に向けた小さな一歩になりました。今後もKKEの「海外ビジネス推進」により真剣に取り組み、計画的に行動していきたいと思います。