実は、人から構造解析プログラムが「趣味」と言われても、自分はあまりピンと来ないんです。
ただ、ほかに特に趣味はなくて、土日も完全に構造解析に関することをしています。
ですからまあ、仕事が趣味とは言えます。今まで、構造解析プログラムの論文を2−30本は書いてきました。私にしたら、論文執筆も大事な仕事だと思っています。自分から仕事を作りにいっているというところは、確かにありますね。
構造解析というのは、物体に力をかけた時にどこにどういう応力や変形が発生するかを調べること。
構造解析に興味を持ったのは、もともと実家が土建屋で道路や水道の工事をしていたので、影響を受けたのだと思います。大学でも構造解析を学んでいました。客観的に正しい結論を出すことが向いているし、好きなんでしょう。設計も案外向いてはいるのですが、主観的に図面に線を引くよりも正しいことが明らかなコンピュータプログラムを作りたいという気持ちがより強いのだと思います。
もともと目的があって使われるプログラムですから、目的じゃないところは手を抜いたり簡素化したりするわけです。ただ、そこが突然重要になるということがあります。
例えば、力をかけた時に今までは壊れる箇所だけがわかればよかったのが、箇所だけじゃなくて、一体どのように壊れるのか?壊れた後まで知りたい、という要求が出てきます。そしてそれがわかると「壊れる」という現象や影響——例えばどこまで部材が飛んで行って、どれぐらい危険なのか、などが素人にもドラマチックに伝わる、ということがあるんです。
構造解析プログラムの論文を書くことには自分なりの矜持も持っています。
論文書きは、入社7〜8年目ごろから始めました。
別にノルマというわけではないのですが、年に一回は書こうと心がけていますね。
何しろ「研究所」という名前の会社ですから、みんなに見本を見せるという気持ちもあります。
構造解析プログラムの作成は私の一生の仕事でありアイデンティティです。
今までにないような構造解析のプログラムを作りたいという夢を持っています。
もし、この会社を辞めたとしたらですか?
そうですね……それでも構造解析をしていると思いますよ。